ベルギーひとり旅行記 (5) - ノートルダム大聖堂横のブラッセリー「Kathedraalcafe」

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その日は日曜日で、アントウェルペンのノートルダム大聖堂は午前中は礼拝のために観光客は入ることが許されなかった。一般公開の13時まで時間を持て余した私は、先に腹ごしらえということで色々と店を探した結果、大聖堂のすぐ横にあるこの「Kathedraalcafe」に入ることに。地球の歩き方にも掲載されているくらいのオーソドックスなお店かと思いきや……店の中は想像以上の異空間だった。

建物はレンガ造りで木の天井と歴史を感じさせる一方、壁一面いたるところに中世キリスト教を思わせる絵画やら彫像やらがぎっしりと並べられている。横にあるノートルダム大聖堂とは明らかに異なる時代、異なる宗教観のように見えてしまう。店内は所狭しと宗教的なモチーフで溢れかえっている。ところでこのイエス・キリストや伝道師たちの等身大彫像はどこに売っているんだ……!?

極めつけはテーブルに置かれたこの紙のランチョンマットだ。この店のことを知らなければ、これはいわゆるアウトサイダーアートだと認識せざるを得なかっただろう。宇宙服みたいな被り物から伸びる手、翅に目の付いた不気味な蝶、魚に乗るネズミなどなど、あとこの写真の外にはムール貝が人間の足を伸ばしているところも写っている。これはやばいところに来てしまったと思ったが、ここはブラッセリー。飯が上手ければなんでもいいやという感じで、料理を待つことに。

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横では地元の人たちが、ノートルダム大聖堂で礼拝を済ませてから来たのだろうか、大人数で和気あいあいと昼からベルギービールを呷っている。

さて、肝心の昼飯はというと……大鍋に山盛り出てきたのがベルギーで有名なムール貝の白ワイン蒸し。その奥に、これまたベルギー料理といえば上位に必ず出てくるであろうフリッツ。どちらも1人前を頼んだはずなのだけれども、出された瞬間に圧倒されてしばし呆然としてしまった。とにかく多すぎる。

こういうときに真っ先に沸き起こる感情が恥ずかしさというのが、なんとも自分らしい。周りに「ありゃ二人で分け合う料理なのを一人で頼んでる」だの「観光客が慣れてない注文であたふたしてる」だの思われているんじゃないだろうか?と、つい考え過ぎてしまう。

ただ、それは完全に杞憂だった。隣のテーブルを見ると、妙齢の婦人二人が自分と同じバケツのムール貝を一人ひとつずつ食べて話に花を咲かせているのが目に入った。そこでようやく自分の要らぬ心配が晴れることとなり、負けじと自分もひたすらにムール貝の殻から身を取って食べ続けた。

気になる味はというと、ムール貝自体は日本で食べるものとそれほど大きな違いはない。ただ底に溜まっているスープがめちゃくちゃ美味しいのだ。ムール貝から出た旨味に加えて、セロリと玉ねぎから出る野菜の甘みや風味が合わさっている。そして何より、そのスープが尋常じゃなく塩辛い。塩は最高の調味料だと言わんばかりの暴力性がある。海水をそのまま飲んでるかのような塩分濃度で、正直なところ量は全く飲めないのだけれども、それでも時々水を口に含んでリセットしつつスプーンで掬っては飲みを繰り返す。合間に食べるセロリがその塩気を吸ってこれまた爽やかな味になっている。いままで生きてきて初めてセロリを純粋に美味いと思った瞬間だった。

こちらのフリッツもなかなかの美味しさ。味自体はただのフライドポテトなので別に大したことないといえばそうなんだけど、横についているマヨネーズがこれまた美味しい。ちょっと酸味が効いてサラリとした舌触りのマヨネーズは、タルタルソースとは違った相性で癖になる。

そんなこんなで、バケツいっぱいのムール貝と山盛りフリッツを食べ終える頃には13時を回っており、少しお腹周りに苦しさを感じながらノートルダム大聖堂の入り口へと向かうのだった。

参考

https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g188635-d2173992-Reviews-Kathedraalcafe-Antwerp_Province.html Kathedraalcafe (アントワープ) の口コミ22件 - トリップアドバイザー