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ベルギーひとり旅行記 (1) - ブリュッセル唯一の自然発酵ビール醸造所「Cantillon Brewery」

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「君がビール飲めたらベルギー旅行は二割増しで楽しめたでしょうね」とは友達の言。

下戸である自分がベルギーに一人旅をしたのは、2017年1月末のこと。そもそも酒が一滴も飲めない自分が多くのベルギー観光客の主目的であるベルギービールを飲めないのは、何とももどかしい気持ちもあるのだけれども、そんなことは気にしない。

様々な町並みや古い建物をめぐる旅を一通り終えて最終日。遠出をするには時間がなく、かといって買い物だけでは物足りないくらいの空き時間ができたので、ブリュッセル市内にある「カンティヨン醸造所」というブリュワリーを尋ねることに。

Cantillon

このカンティヨン醸造所は、自然発酵による伝統的な製法でビール醸造を続けている、ブリュッセルに唯一残る醸造所。そうやって作られるビールは「ランビック」と呼ばれ、強い酸味を持つのが特徴だ。そう言えるのは実際に自分もこのランビックを試飲したからで、この醸造所は内部を自由に見て回ったあとに試飲できる見学コースを用意している。見学コースは実際に醸造を行っている設備や倉庫をめぐるもので、早ければ15分くらい、長くても1時間もあればじっくり見て回ることができる。

さて、Google Mapが指し示すカンティヨン醸造所についたものの、一見して閉まってそうに見える醸造所。入り口と思われる扉には確かに10時からと書いてあるので、そろりとそのドアを開けると中にはまさに倉庫といった様子で瓶やら樽やらがズラリと並ぶなか、端っこにはバーカウンターと簡素な飲食のスペースが見える。

中をウロウロしていると、気さくそうなおじさんに声を掛けられる。内部を見学したいと申し出ると、一通りカンティヨン醸造所とビールについて説明を受けたのち、日本語で書かれたパンフレットを渡される。ここから先は一人で自由に醸造所内を巡ることに。壁一面にビール瓶が積み上げられ、CANTILLONと刻印された木のビールケースが並んでいる。

見学コース最初にまず見えてくるのが、マッシング槽と呼ばれる大きな容器。これはオブジェなんかではなく、実際に今この瞬間醸造に使われているもの。ここで小麦と大麦麦芽が沸騰した湯と混ぜられるため、室内にはなんとも良い穀物の香りが立ち込めている。

その横には発動機が大きな音を立てて回り続けている。古めかしい機械が、この醸造所の古さを感じさせる。といっても今なお実際に回り続けて二階の粉砕機や撹拌するための羽根を動かしているのだから、バリバリの現役だ。

そこから二階に上がると、さきほど見た槽の上部にあたる部分が見えてくる。ここには、さきほどのマッシング槽に原材料を投入する粉砕機と、湯と混ぜられたあとに汲み上げられ煮沸を行う釜がある。

下から伝わった動力が実際に歯車を回している。こういう露出した古めかしい機械が心をくすぐる。

壁のレンガや窓から差し込む光がなんとも言えない雰囲気を醸し出している。奥には下から立ち込める蒸気も見える。

お次は穀物倉庫だ。屋根裏への階段を上がる。原材料の穀物の保管には、風通しのよい屋根裏が適しているのだとか。

醸造用の樽や荷運び用の台とともに、袋詰された原材料が積み上げられている。画一的な袋に詰め込まれていたりビニールの覆いが掛けられたりしている姿は、何とも現代的というか、ふとノスタルジックな気持ちを現在に戻してくれる。

ちなみにこれは展示用の荷台の上にあったもの。他では見なかったデザインなので、古いラベルのようだ。深緑の瓶に積もるホコリが、とても良い。

その後は製造過程に戻り、野生酵母を根付かせる冷却槽を見ることができる。この大きなバットのような槽に先程まで煮沸し糖度を高めた麦汁を流し込み、冷却とともに空気中の酵母を取り込む。当然ながらここで雑菌などが繁殖するとこの槽全体が失敗となってしまうため、この槽は小さな小窓から暗い中を覗き込む程度。

ちなみに、見学コースにはこのように番号が振られており、さり気なく次の順路を示してくれる。

そのこから一階に降りると、今度は樽の貯蔵室が見えてくる。上で冷却された麦汁はこの樽に入れられ、中でじっくりと発酵が行われる。

これらの樽はもともとワインなどに利用されていたもので、よく見るとそれぞれフランスの地名やらメーカー名やら別々の文字がかかれてあったり、ぶどうの絵の焼印が押されていたりとその面影が残る。その横にはきちんとカンティヨンのマーク。

これはいわゆる濾過器で、酵母菌の残骸などで濁ったランビックを通して濾過するらしい。この何ともいえないスチームパンク感がたまらない。

こうやって出来たビールが、樽に詰められて静かに出荷の時を待っている。

下では従業員が樽を転がして何やら作業をしている。実際の工程を見ることはできなかったが、おそらく熟成に使われた木樽を洗浄しているところ。

され、一通り見学したところで最初に案内を受けたホールに戻ってくる。最後の(多くの人にとっての)お待ちかねの試飲だ。流石に見学させてもらっておいて一滴も飲まないのも申し訳ないと思い、少しでいいと言ってグラスにビールを注いでもらう。

ビールは少し濃い色をしており、あまり泡立ちはない。少し口の中に含ませると、苦手なアルコールの味の中に、少し酸味があり、そしてなんとも形容し難い香りが広がる。今回の見学コースで好感度を極限までに高められた状態で味わう一滴だからというのもあるが、今まで不意に飲んだりしたビールよりも、麦やホップなどの素材に近い味がした。量は飲めないのだが、ちびちびと何度も少しずつ口に含んでは香りを味わう。

味の記憶というものは何とも扱いづらいもので、その味を思い出そうとしても思い出せないのに、いざそれを口にした瞬間その時の光景が思い浮かぶ。これを書いている今はこの時飲んだビールの味を鮮明に思い出すことはできないが、知り合いの土産用に買ったものがあるので、飲み交わすときに少しだけ、また味見させてもらおうと思う。

参考

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